top of page

昼下がりの親子二人

城内の裏側にある、人気の無い庭で二人の親子がのんびりと空を見ていた。

   

  

「いい天気だなあ」
「いい天気だねえ」

  

   

夏侯淵と夏侯覇である。

  

  

「そういや、息子よ」
「うん」
「もうちっと、背え、伸びねえのかな」
「伸びるよ!これからだよ、父さん。ちょっともう、これからだから見ててって」
「そうか?だといいけどよ・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・父さん、俺に聞きたいの、そこじゃないでしょ?多分」
「ええっ・・・。なんで、分かんの?」
「俺、父さんの息子なんだけど」
「さすがだなあー!仲権!」
「で?どうしたの?」
「いやさ、お前の好みって、どうなんだろうなーってふと思ってよ?」
「好みって」
「いやさ、だからさ、いるじゃんか近くに」
「近くにって、あ、まさか」
「そのまさかだよ。ちなみによ、どっちかってゆーと、どっちよ」
「ええ!?それ聞いちゃうの!?だって真逆じゃん!あの中間が良いんだけど・・・」
「へえ・・・、そうか。そうなのか・・・。ってイマイチ分かりづれえなあ」
「そういう父さんはどうなのよ?」
「え!?それ、聞いちゃうのか、この俺様に。そもそもだな、父親には父親の威厳ってものがあってだな」
「あーはいはい。で?どっちなの?」
「・・・ちょっと、あっちかも」
「ええ!!?うっそ!え、あっちって、え、ホントあっち?」
「しー!いやさ、あっちもいいだけど、どうかっつーと、意外と、そういう感じかなあって。おい、ちょっと今俺から離れたろ」
「えー・・・、父さんそういう趣味だったのかー・・・。あ!」
「な、なんだよ」
「でも、言われてみれば、うちのかーちゃんがそうじゃん・・・。あー、そー。あー、なんか納得かも」
「だろ?意外とな、ああいうタイプはしっかりしてるし、悪い奴じゃないんだぞ?」
「うーん、そうかも知んないけど、やっぱ俺は嫌かなー」
「あ!ひっでえ!お前、今自分のかあちゃん否定したか?」
「いやいやいや、否定はしてないけどさ!なんつーか、やっぱもっとおっとりしてるほうが、俺はいいや」
「そこ、親子で分かり合えないのかあ」
「いいんじゃないかなあ、そこは分かり合えなくても」

  

  

「しかし、お主らの会話は代名詞ばかりでさっぱり意を得ぬな」     

   

背後からの急な声に思わず二人は振り向いた。
そこに立っていたのは、他でもない曹操である。

  

     

「と、殿!?」
「わ!」

  

   

「先ほどから聞いていれば、あっちだのそっちだの・・・。ただ、それで会話が成立しているところが、流石お主ら親子であるが」

   

  

「うわー・・・、それならば仰って下さいよー。もう、お人が悪いんだから・・・」
「ち、ちなみにいつ頃から後ろに・・・?」
「そうよな。身長の話あたりからだ」
「ってそれ、しょっぱなからじゃないですか!」
「・・・ちなみに、殿は、どんな感じですか?」
「ん?」
「いえー、その、そっちの好みは?」
「それを聞くのか」
「もう、どうせだったら、聞きたいなあっと」
「ふむ。わしは美しく才があれば、いくらでも」
「・・・」
「・・・」
「さっすが、殿・・・。いくらでもってのは、頭になかったなあ」
「うん、俺も」
「お!そこ、意見合ったな、息子よ!」
「そこは、合っておこうよ、父さん」

こうして魏の昼下がりは、のんびりと過ぎていくのであった。

 

  

  

   

おわり

bottom of page