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雛芥子の咲く場所

輿車の揺れで左右に遊ぶ黒髪を指で梳きながら、嫌か、と劉備は聞いた。
その問いに、諸葛亮は静かに目を伏せるだけである。拒絶に顔を歪めることもしなければ、承諾の代わりに微笑むこともしない。じっと静かに閉じた目蓋の傍でただただ前髪が揺れていた。
隙間から砂埃が舞い込んでくる。彼が咳をした。
劉備は髪を梳いていた指を彼の頬へ滑らせ、付いていた砂を優しく払った。そして身体を寄せて口を吸う。
「嫌か」
「・・・」
劉備は諸葛亮の首筋を指の背でなぞった。
「分かっているのだ。そなたが拒めないことくらい」
輿車を動かしている兵達の業務的な会話が外から聞こえてきた。
「分かっていても、そう聞いてしまう自分は、ずるいだろうか」
「・・・」
「しかし、そなたもずるい。沈黙を保つことで、否定も肯定もせず、全てを保留にして、全て受身でいようとするのだから。結局、私が悪者になる」
「そんなことは・・・」
「では、どう思っているのか、教えてくれ。本当に嫌ならば、断ってもいいのだぞ」
そう言いながらも、劉備は首筋から胸元へと降りて鎖骨や身体の形を確かめるように手を滑らせた。口も、また吸った。もうひとつの手は諸葛亮の髪を後ろから引いて少しだけ上を向かせた。淑やかに開かれた唇を味わい舌を絡ませる。奥へ奥へと行くように、深く、深く。劉備の腰が少し上がった。劉備は片足をどこへ置くか彷徨わせたのち、諸葛亮の足の間に深く膝をつけた。思わず顔を背けようとする諸葛亮の舌の腹を強く舐め上げる。
飲みきれなくなった唾が諸葛亮の口の端からひっそりと流れた。劉備がそれを辿るようにして唇を動かせば、ひとつ儚い吐息を漏らした。
「・・・いいんだな」
「・・・はい」
劉備はそう答えた孔明の首の付け根を強く吸った。思わず彼が小さく声を上げる。
「嘘つきだな。本当は、嫌なくせに・・・」そして吸った処に赤い痕が付いた。詫びるように、そっとそれを舐める。
「お前は、優しいから、いけない」
「それは、誤解です」
そう絞り出した諸葛亮の腰へ手を降ろしていった。
「本当だな」
褄を割って、そこに手を入れた。思わず身じろぎをする諸葛亮を押さえつけるようにして囁いた。
「・・・本心はどちらにしろ、な」
「・・・」
「声に気をつけてくれ・・・。外に聞こえては、そなたが辛いだろうから」
「・・・っ」
「抑えるのが大変なのなら、手伝ってやろうか」
そう言って劉備は諸葛亮の口をくわえた。くぐもった声が狭い輿車の中に漏れた。
しばらくすると諸葛亮が小さく震えながら、喉を反らせた。もがくように、何かを掴みたがって暴れるその腕を、劉備が強く輿車の壁に押しつけた。
「・・・んっ、や・・・」
「ああ、なんて、美しい・・・」
また兵達の声が聞こえた。宮中に着くまでには、まだ時間があるようだった。

  

   

劉禅は牀で諸葛亮を待っていた。
今夜は寝る前に学問を教わる予定であった。牀の上に寝そべりながらぼんやりと書物を眺めていると扉が叩かれた。いらえを返すと諸葛亮が書物を抱えて入ってきた。
長袍を脱いでから畳んで牀の傍にあった櫃の上に置いた。薄い内袍だけになって牀に腰掛けようとした諸葛亮はふと、手前でかがんだ。
腰を折った際に冷たそうな長い髪が肩から滑り落ちた。その隙間から、彼の首筋に劉禅はあるものを見た。
「これは、阿斗様のものですか」
諸葛亮が床から拾ったものは髪留めであった。
「・・・ああ、そうだ。すまぬな」
「こちらの櫃に置いておきますので」
そうしてから、諸葛亮は牀に上がり、持ってきた書物を選り分け始めた。俯きながら右左と視線を動かす諸葛亮の睫毛は長く、その双眸にしっとりと影を落としていた。
劉禅はその様子を眺めていたが、突然諸葛亮に抱きついてみせた。
「阿斗様」
諸葛亮は、戸惑いながらも子供をあやすように彼の頭を優しく撫でた。
「どうか、されましたか。どこかお加減でも」
それには答えず、劉禅は更に諸葛亮を強く抱きしめた。首筋に深く顔を沈める。
「孔明。お主・・・、父に抱かれたろう」
その言葉に、頭を撫でていた彼の手が止まった。
「・・・も、申し訳ございません。・・・今、何と」
「父に抱かれたのかと、そう聞いたのだ」
「・・・い、いえ。そのような事は決して」
そう言った諸葛亮の首筋をそっと撫でた。
「このような痕を付けて、しらじらしいではないか、孔明」
「・・・」
「ああ、お前からは見えないのか・・・」
諸葛亮が眉を僅かに寄せて、襟元をかき寄せた。
「それにな、孔明。お主は気付かぬのかも知れないが、父の匂いが香って仕方がないのだ。一緒にいるだけで、匂いは移るものだろうか・・・」
「本日は、狭い輿車で一緒に移動をしましたから、恐らくその時に」
「では、この痕は、なんなのだ。一体、誰が付けたのだ」
「・・・」
「孔明、別に私は怒っているのではないし、貶しているのでもない。ただ、聞きたいだけなのだ」
「・・・」
「父が許されるのならば、私も許されるのか、とな」
「な・・・、阿斗様、ご冗談を・・・」
「では、お前は戯れ言でこういうことを言うものなのか」
「い、いえ・・・。しかし」
「皮肉だな。こういう所が、似るなんて」
そう言い捨てて劉禅は諸葛亮の口をくわえた。必死に抵抗をするが、強く抱きしめられていて振り解くことができない。長く長く口付けを施していくうちに、諸葛亮の抵抗が弱くなっていった。
「・・・お前の舌は、本当に柔らかいのだな」
「あ、阿斗様」
「幼名で呼ぶな、孔明」
「・・・劉禅様、どうか、腕を放して下さい」
「何故父は許されて、私は許されぬのだ」
諸葛亮は緩く首を振った。
「許されません。・・・どちらも」
「下らない問答ではないか」
「ですが、劉禅様は、僭越ながら我が子のような存在です。生まれたての時から存じているのです。また、私の養子の喬とも殆どお歳が同じでいらっしゃいます・・・。許されるべきではないのです」
「それであれば、父はどうなのだ。父から見れば、お前だって子供のようなものではないか」
「・・・この話はこれ以上、するべきではございません」
そう呟いた諸葛亮を劉禅が突然牀に押さえつけた。両手首を頭の上でまとめて掴み、馬乗りになる。
「劉禅様っ・・・。お戯れが、過ぎます・・・」
「悪いが、戯れのつもりは、一切ない」
劉禅は諸葛亮の首筋に唇を這わせた。そのまま肩へ移り、胸元へ移り、そこを強く吸った。思わず諸葛亮が息を飲んだ。
「孔明。父はどのようにお前を抱くのだ。お前が望むのであれば、・・・同じように抱いてやってもいいぞ」
「・・・お止め下さい、どうか、もう・・・」
「なぜ拒む・・・。若い頃の父に抱かれているとでも思えばいいではないか」
掴んでいる方の指で、諸葛亮の硬く握られた手をそっとなぞる。
「昔から、この大きな手でいつも私の頭を優しく撫でてくれたものだったな。爪が薄くて奇麗な手だ」
そう言いながら片方の手を下の方へ這わせてていく。
「・・・っ」
「私が小さい頃は、自分の手がこれにすっぽりと収まってしまう程だったが・・・。今は、お前の手首を掴むのに苦労しない程には大きくなった」
「や・・・っ、劉禅様・・・」
「・・・悩ましいな、本当に。・・・美しい、お前がいけない」
しばらくすると、諸葛亮は頭を牀にこすりつけるようにして身を捩りだした。口を微かに開けて、小さく震える。
「ああ、孔明・・・まだ、いかないでくれ・・・。あまりにも、お前の表情が愛おし過ぎて・・・もっと見ていたい」
その言葉に、諸葛亮は一筋涙を流しながら首を横に振った。

  

 

その時、誰かが扉を叩いた。

    

  

諸葛亮が思わず息を飲む。耳を澄ましていると「阿斗、いるのか」と声が聞こえた。劉備の声だった。
劉禅は牀にあった掛け布を広げ、壁の方を向いている諸葛亮に被せながら、いらえを返した。扉の元へ行って、静かに開けた。
劉備ひとりだった。
「済まぬな、夜更けに」
「構いません。どうされましたか」
「今夜、孔明がお前のところへ行っていると聞いたのだが、まだいるか」
「いえ・・・。確かに、先程までいましたが、既に帰っていきましたよ。どこに行ったかは分かりませんが・・・」
「そうか・・・」
「見当たりませんか」
「そうなのだ」
「執務室でも覗いてみてはいかがでしょう。ここの所、遅くまで書簡の編纂などをしていることが多いと聞きますし」
「実は既に一度覗いてはいるのだが・・・。まあいい、念のため、もう一度覗いてみよう」
その時、ふと劉備は眉をひそめた。空耳にも思えるような小さな声だったが、中から嗚咽のようなものが聞こえたからだ。
「・・・誰か、いるのか」
その問いに、劉禅は自分の唇を指で撫でながら小さく呟いた。
「まあ、・・・夜、ですから」
劉禅の答えにそれ以上劉備は追求することなく「では、また明日な」とだけ言った。
「はい、父上。・・・良い夜を」
そう答えて、劉禅はそっと扉を閉めた。

   

      

「昨晩はどこにいたのだ」劉備は牀に横たわり、諸葛亮の頭を撫でながら静かにそう聞いた。
「お前を探していくつか覗いたのだが、見当たらなかったぞ」
「・・・私邸に、戻っておりました」
夜は深く、寝所は寒かった。劉備は頭を撫でている手に息を吐いた。諸葛亮が手を伸ばして劉備のそれを包み込んだ。
「ありがとう。温かいな・・・」
「風邪でも召されたら、大変でございますから」
「それにしても、昨晩は私邸に戻ったのか。それは良かった。近頃、こちらに詰める日が多いと聞いたから」
そう言って劉備は優しく笑った。諸葛亮が、目を閉じて小さく呟く。
「・・・申し訳ございません」
「なぜ謝る。何も悪いことはあるまい」
そう言って抱き寄せようとした劉備を諸葛亮が無意識に拒んだ。そっと、襟元をかき寄せる。劉備は微かに溜息をついた。
「・・・すまないな、孔明。お前が嫌がっているのは、分かっているのだ」
諸葛亮は首を横に振った。
「いえ、そういう訳ではないのです・・・」
「無理にそう言わなくてもいい。今宵は何もしないから・・・。ただ、一緒に横で眠って欲しいのだが、いいだろうか」
「無論でございます」
劉備は笑みを深めた。
「ああ、お前が側にいてくれると、幸せだ・・・。何故だろうな」
劉備は可愛がるように諸葛亮の頭を撫で続けた。ずっとその顔を覗いていると、諸葛亮が戸惑ったように聞いた。
「殿・・・。どうしてこちらをご覧になっているのですか」
「お前の寝顔を見たいから、こうしてお前が眠るのを待っているのだ」
「そ、そう言われてしまうと、なんだか眠りづらくなりますね・・・」
「それは悪かった。眠りづらいのであれば、子守唄でも歌ってやろうか」
そう言って大きく笑った劉備につられるようにして、諸葛亮も笑いながら答えた。
「いえ、結構です」
「遠慮するな。なに、私の歌声は中々のものなんだぞ。昔、よく宴の席で披露したものだ」
「存じております。・・・しかし、この歳にもなって子守唄とは、さすがに」
「照れるな。母君は、確かお前が幼い頃に亡くなられたろう。子守唄を歌ってもらった記憶さえ曖昧なのではないか」
「それも、そうですが・・・」
劉備は戸惑う諸葛亮の胸元に手をのせて、拍子を取るように優しく叩きながら低く子守唄を歌い出した。
「と、殿」
照れた様子の諸葛亮を見ながら「ほら。目を瞑りなさい。でないと、私がお前の寝顔を見られないだろう」と言った劉備に困った顔を見せた諸葛亮は、しかし柔らかく微笑んででから素直に目を閉じた。
「・・・孔明。多分、私は何があってもお前に絶望する事はないと思う。お前が何をしても、お前に何があっても、どうしてだろうな、全て許せる気がして仕方ないのだよ」
「・・・」
諸葛亮は劉備を見た。劉備は、未だ優しく諸葛亮の胸元を叩き続ける。
「だから、いつもそんなに思い詰めないでおくれ」
「・・・思い詰めてなど・・・」
「そうかな。特に今日のお前は、何かを思い詰めているように見えたが」
「・・・」
「孔明。お前は、お前でいいのだ。私のようになろうとする必要もないし、誰かのようになろうとする必要もない。聖人であろうとする必要もないし、天才であろうとする必要もない。お前は既に、諸葛亮という完成された人間ではないか。今のお前に、足りないところは何もないのだ」
「私は・・・、私は本当に至らない人間です」
「私はそう思わぬ」
悲しそうに諸葛亮は目を閉じた。
「孔明、こちらを見なさい」
「殿・・・、私は」
「孔明。無理に何かを言おうとしなくていい」
「・・・」
「何があっても、私がお前を嫌いになることはない」
「殿」
劉備がふと笑みをこぼした。
「すまぬな。鬱陶しい奴に好かれたと思っているか」
「まさか、そんな」
「さて。私は言いたい事を言ったから、もう寝たいのだが、良いか」
「・・・無論です」
「孔明、私の独り言に付き合ってくれて、ありがとう」
「こちらこそ、勿体ないお言葉、有り難うございました」
そう言って、二人は眠りについた。
しばらくすると諸葛亮の寝息が聞こえてきた。そこにふと、目を開けたのは劉備である。
劉備が諸葛亮の顔を覗くと、いつ流したか知れない涙の跡があった。それを指で優しく拭った。それから、ひとつ大きな溜息をついてから、そっと諸葛亮の夜着をめくって胸元を見た。
そこには濃い鬱血の痕があった。勿論、昨日劉備が付けたものでは、ない。
劉備は、また大きく溜息をついた。それは、今にも泣きそうな震えを伴っていた。
「・・・思い詰めた顔をして」
劉備は諸葛亮の額に口づけを落とした。慈しむように。母のように。
「すまない、孔明。・・・実は、知っているのだ。昨晩、お前がどこにいたかを」
昨晩、劉禅が寝所の扉を開けた際に、偶然櫃の上に畳んで置いてあった袍が目に入ったのだった。見覚えのある袍だった。なぜなら、それは劉備が以前諸葛亮に贈っていたものだったからだ。見間違える筈もなかった。
「至らぬのは、私達だ。愚かなこの親子を嗤わないでいてくれて、ありがとう・・・」

  

  

柊の花が落ちた頃であった。しかし雪の気配はなく、空は澄んでいた。
劉備が執務の合間に白い息を吐きながら中庭をぶらついていると、向こうから同じ様子の劉禅が歩いてきて、ふたりは出会した。
「阿斗」
「父上」
劉備が劉禅を見て、劉禅が劉備を見た。
「何をしているのだ。鍛錬は終わったのか」
「終わったような、・・・気もします」
その言に劉備は思わず溜息をついた。
「星彩に見つかったら、またひと騒動起きるのだから、鍛錬は素直に受けてくれ」
「申し訳ございません、父上。しかし、ついつい・・・」
そう言った劉禅に向かって劉備は再度溜息をついた。
「ほどほどにな。それにしても、近頃はどうだ。ここの所ゆっくり話す機会もなかったからな」
「・・・そうですね。色々と、楽しくやっております。・・・父上はいかがですか」
「・・・こちらも同じだ。・・・色々と」
そう言ってから、ふたりは暫く言を発さなかった。黙っている彼らの上を鶇が鳴きながら飛んでいった。ふと、劉禅があるものに気が付いたように顔を向けた。劉備もつられてそちらに顔を向けると、遠くから書簡を抱えた諸葛亮がふたりの元へ歩いてきていた。
「・・・父上。虞美人の逸話はご存知ですよね」
「・・・」
秦末の武将である項羽には虞という寵姫がいた。項羽は彼女をいたく気に入っており、いつも自身の側に置いた。そして、彼女が葬られた墓には赤い雛芥子が咲いたのだという。
近付いてくる諸葛亮を見たまま、劉禅は呟いた。
「ねえ、父上。私達が死んだ後、雛芥子はどちらの墓に咲くと思いますか」
劉備は、劉禅に一瞥をくれてから静かに答えた。
「咲かんよ。どちらの墓にも」
その言葉に劉禅は声を出して大きく笑った。
「さすが父上・・・。私も、そう思います」
そうしているうちに諸葛亮がふたりの元へやってきた。少し早歩きできたからか、僅かに息が上がっていた。
「殿、探しました。編成の件で、急ぎご相談したい事があるのですが、宜しいですか」
「ああ、勿論だ。中に、入るか」
「はい。・・・劉禅様もこちらにいらっしゃいましたか。・・・星彩殿が探しておりましたよ」
劉禅は深い溜息をついた。
「ああ、どうかそっとしていて欲しいものだ・・・」
肩を落とした劉禅を見ていた諸葛亮は、ふと気が付いたようにふたりに聞いた。
「そう言えば、おふたりがこうして中庭にいらっしゃるのも珍しいですね。楽しそうな笑い声が聞こえましたが、何をお話されていたのですか」
その問いに、鍛錬場に行く為に背を向きかけていた劉禅が振り返って答えた。
「なに。時々、孔明は得も言われぬ愛おしい表情をするものですね、と話していたのだよ」
諸葛亮が思わず動きを止めた。劉備も顔を強張らせた。
「と、いうのは冗談で、単なる世間話だ。天気の話とか」
劉禅の言葉の真偽に判断がつきかねている諸葛亮は、ぎこちない様子で劉備の方を見た。それに気が付いた劉備は小さく笑ってみせて、頷いた。
「ああ、本当だ。単なる世間話だ。鍛錬をちゃんと受けないと、後で星彩が怒って大変だから素直に鍛錬は受けてくれ、とかそういう他愛もない話だ」
「そ、そうですか・・・」
まだ動揺が続いている様子の諸葛亮に、劉備は促した。
「孔明、ところで相談とは何だ。中に行くがてら説明を聞こう」
執務の話に戻ると、諸葛亮はいつもの表情に戻ったように見えた。しばらくふたりで中庭を歩いてから、劉備はふと後ろを振り返った。そうすると何の偶然か、鍛錬場に向かっていた劉禅も同時にこちらを振り向いた。
「殿・・・。どうかされましたか」
「いや・・・。すまぬ、話の続きを」
もはや遠過ぎて表情も見えない筈なのに劉禅が笑っていたような気がして劉備はひとつ息を、吐いた。

    

    

    

    
おわり

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