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どうやら諸葛亮が記憶喪失になったようです

桜咲く。
薄紅色の花雨の下、三國の武将達が缶ビール片手に大いに盛り上がっていた。
穏やかに過ぎていくものと思われたその宴だが、唐突になにやらざわめきが湧いた。
「ん、何か起こったのか?」
と劉備がファミチキを頬張りながら人が集まっている方を見た。
「誰か怪我でもしたのだろうか」
劉備は様子を見に人だかりが出来ている大きな桜の木の下へ向かった。
そこには、蜀の人間以外にも魏や呉の人間達が輪を作っていて、その中で珍しくおろおろしている趙雲と、地面に横たわっている諸葛亮、それを心配そうに覗き込んでいる劉禅がいた。
「どうした、何かあったのか」
「殿」
劉備の声に趙雲は青ざめながら顔を向けた。
「本当に、本当に申し訳ございません。私が劉禅様をお止めしていれば・・・」
「一体何が起こったのだ」
「劉禅様が木の上でAKBを踊ってみたいと仰ってお登りになったのですが、足を滑らせて・・・。それを見た軍師殿が慌てて劉禅様を受け止めようとしたのですが、体勢を崩されて倒れてしまい、地面にしたたか頭をぶつけられまして・・・」
「まことか」
「孔明、申し訳ない・・・。私が妙なわがままを言わなければ・・・」
劉禅が諸葛亮の頬を軽く叩いた。しばらくすると、諸葛亮は小さく呻き声を漏らしながらそっと目を開けた。
「おお、良かった。目を覚ました」
「孔明、孔明。大丈夫か?頭は痛むか?」
上半身を起こした諸葛亮は、不思議そうな面持ちで周囲を見た。
「・・・な、何事でしょう・・・。なぜ、皆様は私をご覧になっているのですか?」
「お前、覚えていないのか?地面に頭をぶつけて、少しの間気を失っていたのだ。みんな心配して様子を伺っていたのだよ」
「・・・心配して?・・・皆様は良い方達なのですね」
「・・・?どういう事だ?」
「こんな見ず知らずの私を心配して下さって・・・」
その言葉を聞いたとき、周囲にいた全員の血の気が引いた。
「・・・孔明、いま、何と言った・・・?」
「え?見ず知らずの私の為に、と・・・」
その言葉に劉備が諸葛亮の元へ駆け寄った。
「信じたくないのだが・・・、まさか、孔明、お前記憶が・・・」
「・・・?」
「孔明、私の名前が分かるか?」
「まさか。私と貴方は初対面です。ご挨拶も差し上げていませんし・・・。そういえば、どうして貴方は私の名前をご存知なのでしょう」
誰かが「どうやら自分の名前は覚えているらしい」と呟いたのが聞こえた。
劉備が半ば泣きそうな顔をして諸葛亮の肩を掴んだ。
「孔明。信じられないかも知れないが、お前は私の家臣なのだ・・・。お前は地面に頭を強く打って記憶を失ってしまったようなのだよ」
「まさか」
「では、お前は何者なのだ。どうしてここにいるのだ」
その言葉に諸葛亮は顔をしかめた。
「・・・確かに、そう言われると、自分の名前以外ぼんやりとしていて・・・、何も頭に浮かんできません・・・」
「孔明」
「・・・まさか、本当に・・・?」
急に心細そうな顔で諸葛亮は劉備を見た。
「そんな・・・。どうしましょう。私、どうすれば」
そう言った諸葛亮に姜維が駆け寄った。
「丞相!どうか安心なさって下さい!丞相の記憶が戻るまでこの姜伯約、食事から住居から全てお世話差し上げます故」
”全て”の所をことさら強調させながら言った姜維に劉備が強く意義申し立てた。
「ちょ、まて。なぜお前なのだ。孔明の世話なら私が見る」
「お待ち下さい。父上はお忙しいでしょうから、孔明の面倒は全て私が見ます」
「いえ、ここは事の責任がある私が勤めるのが筋です」
揉め出した蜀陣営の人間達を尻目に、彼に近付いたのは周瑜と陸遜である。
「諸葛亮、貴様・・・。本当に何も覚えておらんのか?私の事も?」
周瑜の言葉に諸葛亮は申し訳なさそうに首を横に振った。
「ごめんなさい・・・。貴方も、私の知人なのでしょうか・・・?貴方程の美男であれば、一度会えば忘れる事はないでしょうし・・・」
「なんという直截な褒め言葉。これは重篤だな」
周瑜は困った様子の諸葛亮の頬にそっと手を添えて溜息をついた。
「私は悲しい・・・。お前は覚えていないのかも知れないが、私とお前はな、とてもとても深い仲で、その、幾夜も共に」
そこまで言った周瑜の言葉を劉備が鋭く遮った。
「美周郎殿。それ、作品が違いますから。記憶がないのをいい事に、孔明を不必要にからかわないで頂きたい。しかも、その後あなたは孔明に毒を盛られて殺されたでしょ」
劉備と周瑜がもめている間に、陸遜が諸葛亮の手を強く握って涙ながらに訴えた。
「ああ、なんとおいたわしい・・・。私の事も覚えていらっしゃらないのですか?私達は、私が子供の頃から寝食を共にしてきたと言うのに、我が師よ」
「え、そうなのですか?」
素直に驚いてみせた諸葛亮の前に劉備が立ちはだかった。
「陸遜殿。それも作品違いでしょ。勝手に孔明を銀髪にしないで頂きたい」
劉備が陸遜に説教している間に、なにやら地味な文官が諸葛亮に駆け寄っていった。
「なんと・・・!丞相、もしや私の事もお忘れですか・・・!?今はお忘れになっているかも知れませんが、丞相と私は、その、人目を憚るような仲でもありまして」
「おいこら馬謖。モブのくせしてお前もか。作品違いも大概にせよ。このまま行くと魏延まで腰を上げかねないな恐ろしい・・・。しかし何が本当に恐ろしいって、これらが薄い本じゃなくて他の一次創作たちの所業って事だな全く」
劉備が諸葛亮に群れてくる虫達をしっしっと払った。ふと諸葛亮を見ると、手で口を覆いながら可哀想な程青白い顔をして動揺を隠せないでいた。
「ど、どうした」
「・・・まさか、私という人間は、各地で色んな人と、その、関係を持ったりするような、とんでもない遊び人だったのでは」
「いやいやいやいや。あ、えっと、その、色々と完全否定が出来ない点が心苦しいが、今話に出た”諸葛亮”はとりあえず”お前”ではないから安心しなさい」
「は、はあ・・・」
見るからに釈然としていない様子の諸葛亮の前に司馬懿が姿を見せた。

「おい、諸葛亮」

「はい。お呼びですか。もしかして、貴方も私の知人なのでしょうか?」
「私が現れても嫌な顔ひとつしないとは。これは本物だ」
「・・・もしかして、何か以前に、私は貴方に失礼な事でもしましたか?」
しかめっ面の司馬懿に、心配そうな声音で諸葛亮が聞いた。それを見た司馬懿は、少しなにやら考えてから腰を下ろして諸葛亮を近くで見つめた。
「・・・私は狭量な人間ではないからな。そんな昔の事は忘れたわ」
「それでは・・・、やはり、何か私は貴方にしてしまったのですね・・・。申し訳ございません」
「諸葛亮が私に謝罪するとは・・・。明日世界が崩壊していないと良いが」
そう言いながら、声を小さくして諸葛亮に囁いた。
「うむ。そ、その、諸葛亮・・・。こっちを見ながら”仲達”って、言ってみせろ。・・・可愛くな」
「は、はあ・・・」
全く得心いかずという様子ではあったが、とりあえず素直に首をかしげながらそっと「・・・仲達?」と諸葛亮は言った。
「な・・・、なんっ・・・と、けしからん可愛さだ馬鹿めが」
何故か鼻を抑えながら司馬懿は更に言った。
「それなら・・・、諸葛亮、”ください”って、言ってみせろ。こっちを向いて、真摯な感じでな」
「はあ・・・。何を下さいと言えばいいのでしょうか?」
「心配するな。主語はいらん」
そのやりとりを聞いていた劉備が「張飛」と呼んだ。
「ちょっと司馬懿を魏に送り返してくれ。今すぐ」
「心配するな、兄貴。言われなくても今そうしようと思っていた所だぜ」
「さすが我が弟だ。私のアイアン使うか。芝ゴルフでもしようと持ってきたのだが」
「なあに、素手で十分よ」
困惑気味の諸葛亮の前で心なしかワクワクしてる様子の司馬懿を問答無用で張飛が拳骨で思い切りぶっとばした。それは、空に奇麗な星をひとつ添えた。
いきなりの事にびっくりして固まっている諸葛亮に、劉備はそっと近付いた。
「どうやら、お前の記憶がなくなっているのをいい事に、悪い人間達がお前に良くない事をしようと近付いてくるようだ・・・。しかし、大丈夫だ。ちゃんと私が守ってやるからな」
心細そうに諸葛亮は劉備を見つめた。普段は見る事が決して出来ない、このか弱い表情を見ていると、劉備は思わずその顎に手を添えて顔を寄せてしまった。唇が触れようとした所に、曹操がやってきた。
「お主が一番良くない事をしようとしているように見えるが」
邪魔をされた不満で頬を膨らませながら劉備が曹操の方を向いた。
「滅多にない機会なのだ。こんな孔明が見られるのは」
「・・・ふむ。そう言えば、わしは諸葛亮を近くで見た事がなかったな。成る程、面構えの良い男だ」
じっと自分を見つめる曹操を見て諸葛亮が言外に"もしや「他の」自分はこの人とも何か関係があったのでは・・・?”と心配そうに劉備に目で聞いた。劉備は超スピードワイパーの如く手を横に振って"いやいやいやいや、それは多分無い(一次創作では)”と諸葛亮を安心させておいた。
「そう言えば劉備、司馬懿を見なかったか」
「あ、諸事情により、ついさっき蜀のEMSで貴国に送り返させて頂いた。もうそろそろ着く筈だ」
「そうか。ヱビスを買ってこさせようと思ったのだが、まあいい」
そうこうしていると大量のマックの紙袋を持った月英、馬岱と龐統が歩いてきた。買い出しに行っていたらしい。
尋常ではない雰囲気から何事かと察した三人が事情を聞いて息を飲んだ。
「孔明様!なんていう事でしょうか・・・。記憶がなくなってしまうなんて・・・」
「ごめんなさい。・・・その、貴女は・・・」
「ああ・・・。私の事すらお忘れに・・・」
「ま、まさか、これもまたさっきのような現地妻のひとり、では」
それを聞いた劉備はカウンター無双する時のように諸葛亮の言をぶったぎって声を張り上げた。
「いい天気だなあ!ほんとに今日はあ!!」
それから素早く諸葛亮に顔を寄せる。
「さっきの話は忘れてくれまじで。というか、この人は正真正銘お前の細君だぞ」
「え!?・・・こんな美しい方が?」
心底驚いたように諸葛亮は月英を見た。
それまで「何あなた達、私の旦那に変な事吹き込んでいるのよ」と周囲にメンチを切っていた月英が嬉しそうに振り返った。
「まあ・・・、孔明様・・・!今晩は孔明様の好きな肉じゃがにしますね」
「え、本当ですか?」
それを聞いて諸葛亮は素直に嬉しそうな顔をした。それを見た姜維が遠くで胸を抑えながら悶えているのが目に入ったが、劉備は見て見ない振りをした。
「それにしても、記憶喪失ですか・・・。もしかしたら、私邸に何か良さそうな薬があったかも知れません・・・。肉じゃがの拵えのついでに探して参ります」
半ばスキップに近い足取りで月英はその場を去っていった。
心配そうに見守っていた馬岱が諸葛亮を見つめた。
「君・・・、俺の事も忘れちゃった、んだよね?」
「・・・ごめんなさい」
激しくしょんぼりしている馬岱をよそに龐統が諸葛亮に聞いた。
「当然、あっしの事も忘れちまってるよね?」
「ええ・・・」
「それにしても、おかしいねえ」
「その、何がでしょうか・・・?」
「あっしが知っている諸葛亮は、話す時、語尾に”にゃあ”って付けて、手をこういう風にしていたんだがねえ」
と言って自分の手を猫のように曲げてみせた。
「え・・・。ほ、本当ですか・・・!?身体の底から何かが”違う”と激しく訴えてくるような気がするのですが、その、努めてみます・・・

にゃあ」
と諸葛亮は無理矢理言って猫手を作ってみせた。
「・・・こ、この記憶喪失はっ、本当の本当に本物だね・・・っ」
と龐統が腹を抱えて笑いを堪えながら言った。
「後は、考え事をしている時に、こう人差し指を頬に当てたり」
「こ、こうですか・・・?」
諸葛亮はどこぞのアイドルのように人差し指を頬に持ってきて首を傾げてみせた。
「そ、そうそう・・・www ちなみに」
「ほ、龐統!もうそれ以上変な事吹き込むの止めてくれ!」
「劉備殿、そこまで怒らなくてもいいじゃないか。こんな諸葛亮は滅多に見られるもんじゃないよ」
「わ、分かってはいるのだが、見よ、周りを!」
「え?」
周囲を見渡すと、殆どの人間が地面に突っ伏していた。血を流している者(言うまでもなく姜維)さえいる。
「確かに私ももっとこの孔明で遊びたいのだが、これ以上やると人類の末路が笑い死か萌え死か、二者択一になるから止めてくれ。これは中国大陸の危機でもある。三國時代とか言って戦っている場合じゃなくなる」
「それは残念だねえ・・・」
「どうやら、私は本当に皆様に多大な迷惑をおかけしている人間のようです・・・にゃあ」
「諸葛亮・・・。先程の龐統の言は偽りだ。頼むからその語尾止めてくれホント。ライフゲージがもう真っ赤だよ私は」
苦しそうに胸を抑えながら弱々しく言った劉備に、諸葛亮が安心したような顔を向けた。
「ああ、良かった。そうですよね。私も言っていて猛烈な違和感を感じておりました」
これまた胸を痛そうにしている馬岱が聞いてきた。
「それにしても、記憶喪失って何をすれば治るんだろうねえ?」
「そうさね。強烈なショックを与えると、その衝撃で記憶が戻る、というのは聞いた事があるけどね」
「強烈なショック、か・・・」

馬岱は少しの間考えてから、唐突に諸葛亮を抱き寄せて深く口づけをした。

諸葛亮のみならず、周囲の人間まで驚きで動きが固まった。
少ししてからやっと自分が何をされているのか認識出来たのか、諸葛亮は強く抗った。
「・・・ん、やめ・・・っ」
馬岱は口を離して、そっと呟いた。
「これでも、やっぱり、ダメかな・・・?」
「驚きました・・・。なにがダメなのですか、馬岱」
「・・・・・・・・・え?」
「どうしてそんな顔をしているのですか?飲み過ぎたのではないですか?」
「今、俺の名前言った、よね?」
「はい。馬岱は馬岱でしょう?」
「孔明!記憶が戻ったのか!?」
劉備がそう言うと、諸葛亮はびっくりしたように肩をすくめてそちらを向いた。
「え!?殿!・・・というか、皆様も・・・!?」
どうやら周りに人がいないと思っていたらしい諸葛亮は馬岱を強く睨んだ。
「馬岱殿、公衆の面前でこういう真似は止めていただきたい」
「だ、だって」
そう言ってからしょんぼりと馬岱はまた肩を落とした。
「しかし、記憶が戻って本当に良かった」
「え、記憶・・・?」
「孔明、お前は頭を強く打って少しの間記憶を失っていたのだよ。それを、まあ、馬岱が戻してくれた、って事になるのだろうか」
そう言って劉備もつい馬岱を睨んだ。
「でも本当に良かった。お前が記憶喪失になったおかげで、色々と危機が訪れていたのだよ」
「よく分かりませんが、そんな大事だったのですか・・・。それは、本当にご迷惑をおかけ致しました・・・」
そこへ、長時間走ってきたのだろう、息も絶え絶えな司馬懿がやってきた。
「や、やっと戻ってこられたぞ・・・。どこまで人の事をふっ飛ばしたら気が済むんだ馬鹿めが」
「司馬懿」
「・・・その、諸葛亮」
「どうしましたか、司馬懿。そのように赤くなってもじもじするなんて貴方らしくもない。気味が悪いですね。私に対する新手の嫌がらせですか」
諸葛亮の言葉に、目を出して司馬懿は驚いてみせた。そこに劉備が近付く。
「諸葛亮、司馬懿なのだが、なんと先程お前に」
そこまで言った劉備を司馬懿は鬼の形相で諸葛亮から引き離した。
「劉備この馬鹿め凡愚めがと言いたい所だが今日だけは本気でごめんなさい」
「ふぅん?で?」
「で?とは何だ」
「またまた。軍師が口止め料って言葉を知らない訳ではないでしょう」
「・・・この任侠くずれが、人をゆするつもりか」
「諸葛亮!さっき司馬懿は」
「本当にごめんなさい。おいこらこっち向け。くそ、仕方ない・・・!諸葛亮当時七歳頃の写真でどうだ」
そう言って懐から白黒の写真を出した。目が大きく、睫毛が長い可愛らしい子供が写っている。
「な、なんだと・・・。どうしてお前がそんな貴重な物を持っている。くっ・・・、恐ろしい可愛さだな。ヤフオクでもまず見ない代物だぞそれ」
「個人情報保護法により詳細な出品者及び経緯の説明は控えさせて頂きたい」
「・・・ふむ。仕方なかろう。それで手を打とう」
「珍しいですね、お二人がそのように顔を突き合わせてお話されるなんて・・・。一体何を話されているのですか?」
聞いてきた諸葛亮に劉備と司馬懿は振り返り満面の笑みで答えた。
「なに、単なる情報交換だ気にするな」
「なに、単なる商談だ気にするな」
「・・・いえ、敵国と情報交換とか、商談とか、そういう大事な件は出来れば私を通して頂きたいのですが・・・」
「いや、これは非常に瑣末事だからな。そしてもう解決した。さて、孔明、ひと騒動あったが飲み直そうではないか」
そういって諸葛亮の肩をさりげなく抱いた劉備を司馬懿は思い切り睨んだ。
遠くでにやにやしながら猫手を作ってみせる龐統を見ると先程の事が思い返されて追尾ダメージを食らう為に駆け寄っていって殴ってやりたい所だが、今は止めておいた。何はともあれ一件落着で良かった。
「そう言えば殿、姜維が見当たりませんが・・・。少し彼と執務の話をしたいのですが・・・」
「お前、花見に来てまで執務の話か。だめだ。無粋にも程がある」
そう言って諸葛亮をシートに座らせた後、後方で様々な種類のダメージを食らって大量の血を出して倒れている姜維にシートを被せておくよう、劉備はジェスチャーで馬岱に指示を出した。
「それにしても、何やら本当にご迷惑おかけしたようですね・・・。申し訳ございません」
「なに、終った事だ。それにしても桜が奇麗だな」
「ええ、本当ですね」
そう言った諸葛亮の頬を指の背でそっと撫でた。
「・・・殿?」
「いや、やはり、お前はお前であるのが一番だな」
「そ、そうですか」
「うむ。これからも、よろしくな」
「こちらこそ。宜しくお願い致します」
そう言って二人は笑い合った。
日が暮れるまで舞い散る桜の下で宴会は続いたのだった。

 

 

   

 
おわり

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